株式会社丸互
感染症対策からテレワークに至る経緯
・2020年2月
大型クルーズ船の横浜入港により、新型コロナウイルス感染症への不安感が身近な現実になり始めた頃で、首都圏への出張をためらいながらも、マスクだけの対策で新幹線と在来線を使い都内でDX(デジタルトランスフォーメーション)の実践セミナーに参加。セミナーで情報収集しながら、頭の中で新年度からの活動に向けて様々な構想を描いていた頃。
・2020年3月
感染者の情報が日を追うごとに増えていく中、「3密」なる言葉が聞こえてきて、オリンピックも延期の方向。手指消毒のアルコール準備や布タオルの使用禁止など少しずつ感染症対策を行いながら、営業的に「感染症対策向けの商材展開」を開始。介護施設などは入場制限が掛かった為、テレアポによる営業を中心にWeb会議システムなど、在宅ワークや拠点間連携向けの商品やサービスの提案を重点的に実施。この先の状況悪化に向けて、BCP対策としてテレワーク実施の検討を開始。
・2020年4月
市内で感染者が出た事により、一気に緊張感が増し、連日BCP対策の打合せや席のレイアウト変更や分散配置など感染症対策の強化を実施。実施可能な部署からテレワークを開始。
テレワークの実施
テレワーク実施に当たり、社内外のコミュニケーション手段や書類の手続きなど様々な対策が必要となったが、一番の課題はパソコンの作業環境。これについて「リモートデスクトップ方式」と「クライアントVPN方式」の二通りの仕組みを検討。必要な設備・速度、機能・セキュリティ・コストなどを比較。社内の全部門へ説明するも、どちらの仕組みも一長一短あり、全社で一つに絞る事はせず、部署や業種によりそれぞれの方式を選択する事に決定。
環境構築はIT部門(情報技術部)にて一括して、全部門の環境を作成。ただし、役員やIT以外の部門では、テレワークを行うにあたり、普段と何が変わり、どんな事に気を付け、どうすれ良いかなどのルールが無かった為、IT部門と総務部が連携して、テレワークのガイドラインを作成。
仕組みの検討~ガイドラインの作成~環境準備までを3日間で行い、全社にてテレワークを開始する事ができた。事業主体が製造業でありながら、テレワークが速やかに行えたのは、早い段階での準備とIT部門の存在のおかげと社内で評価された。
リモートデスクトップ方式
在宅テレワークにおいて、社員分の在宅用パソコン台数を揃える事は、時間的にもコスト的にも困難。また、ソフトウェア開発で使う事を想定すると、自宅のパソコンでは性能面や環境面で、作業効率が著しく低下してしまう。さらに、開発用のパソコンはソフトウェア資産や機密情報が入っており、自宅へ持ち帰るリスクも高い。加えて、万が一テレワーク中に客先対応等で会社に出勤し作業をする場合などは、その都度パソコンを移動する必要があり、故障や情報漏洩のリスクもある。
このような事から、役員やソフトウェア開発作業者については、リモートデスクトップ方式を利用した。
リモートデスクトップについては、様々な実現方法はあるが、機能や導入実績、コストなどを比較し、今回は「splashtop」を選択した。(年12,600円/台)
結果、会社の古いパソコンや自宅パソコンを使って、在宅テレワークを実施。ストレスなく仕事ができた。
クライアントVPN方式
リモートデスクトップ方式の方が、セキュリティも担保しながら、自宅のパソコンも利用できるなど利点も多いが、サービス利用に際し、ライセンス費用が掛かる事と、個人でパソコンを持っていない従業員もいる事から、IT部門以外などでこのクライアントVPN方式を利用。
元々、客先へのリモート保守用に使用していたルーター(YAMAHA製)と専用回線を使用し、電子証明書とID・パスワードによりセキュリティを確保する事で実現。普段会社で使っているパソコンを自宅に持ち帰ってもらい、自宅の通信回線から社内のサーバやプリンタに接続。自宅においても会社にいるのと同じように仕事が行えた。
営業職などは、提案書や見積書など紙の印刷が必要だが、会社の複合機のハードディスクへ出力、その後、直行直帰の出先から会社に寄って、セキュリティ印刷(複合機のハードディスクから個人パスワードで印刷)を使ってまとめて印刷。捺印も必要な事から、運用上問題にはならなかった。
環境準備段階において、自宅へ持ち帰る前の、パソコン内のデータ整理には手間取ったが、基本的に会社のパソコンには全てIT資産管理ソフト(操作ログ取得、ネットワーク制限や入出力制限、デバイス制限など)が入っており、自宅へ持ち帰っても、普段の使い方ができ、セキュリティも保たれる事から、情報漏洩等のセキュリティに関するような事故は起きることなく問題無く運用できた。
テレワークの効能と課題
いずれの方式についても、社内にいる時と比べ、コミュニケーションの不足が懸念されたが、SkypeやSlackといったチャットツールを使う事で、問題がなかった。むしろ、「普段コミュニケーションが苦手な人ほど、チャットではコミュニケーションが増えた」、「履歴が残る為、言った言わないや、聞き漏らし等が無くなった」、「違う人に何度も同じ話をする必要がなくなった」など効能が多く見られた。
テレワーク開始前は、Webカメラやヘッドセットを使って、コミュニケーションの確保を行おうとしたが、総合的にチャットツールで十分だった。(そもそもWebカメラやヘッドセットも在庫が無く、入手できなかったが・・・)
また、これまで情報の共有について、紙や口頭での手段が多かった部門も、今回の事から、データベース化するなど、情報共有のデジタル化が進んだ。
在宅テレワークをした者からは次のような声もあり、今後の課題と捉えて対策を検討していく予定。
- 「仕事と私生活の切り替えの難しさ」
- 「一人で業務を続けることでの精神的な負担」
- 「対面でのコミュニケーションや雑談による、ひらめきや発想などの機会の減少」
- 「自宅の作業環境(部屋・机・家族の理解等)の整備」
- 「モチベーションの維持」
わが社の現在
5月中に全社的なテレワークは解除したが、今回作った環境と経験から、必要に応じて、いつでもテレワークへ移行できるようになった。実際、感染拡大している地域へ行った従業員については、個別に一定期間、在宅テレワークに移行してもらっている。
さらに、出産を控えた妊婦については、育休前に在宅テレワークに移行する事で、感染症予防も含めて、妊婦にやさしい職場環境の実現が行えている。
まだ、しばらくは感染症対策が必要であり、在宅テレワークの機会はまだまだ必要となると思われるが、働き方改革といった面からも、ルール整備も含め、今後も推進していきたい。
なお、営業的には、感染症予防で面会を制限している介護施設に対し、今回のテレワーク環境を流用した「リモート面会」環境を提供し、好評を頂いている。
こちらについては、施設側はもちろん、施設利用者及びその家族からも喜ばれている為、引き続き展開をしてきたい。
会社概要
会社名 | 株式会社丸互 |
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所在地 | 〒942-0061 新潟県上越市春日新田4丁目1番1号 |
事業内容 | 金属加工、情報技術・システム、樹脂成形、建築土木資材販売、木材加工 |